個人向けサーバーと法人向けサーバーの違い

レンタルサーバー(共用サーバー)には様々なサービス・プランが存在します。ただ大別すれば、個人ユーザーの利用を主に想定しているものと、企業・組織での利用を想定しているものに分けることができます。

ここでは「個人向け」と「法人向け」において、料金や機能などにどういった違いがあるのかを詳しく解説します。

料金の違い

もっとも分かりやすい違いが価格面です。まず個人向けサーバーについては、誰でも気軽に利用しやすいようにと、比較的低料金の設定になっています。具体的には、月額で100円程度~1000円程度が大まかな目安になります。

随分と価格に幅があると感じるかもしれませんが、これは料金に応じて、スペックや機能に大きな違いが出てくるためです。言い換えれば、選んだサービス・プランによって、レンタルサーバーでできることそのものが大きく異なってきます。
なお以前に比べれば全体的に低価格化が進んでいます。2010年代は月額1500円前後のサービスも見られましたが、2021年現在ではエックスサーバーの月額1100円(スタンダードプラン・12ヶ月契約時)を上回る価格のサービスは滅多にありません。

・参考記事:個人向けレンタルサーバーの価格相場

一方で法人向けサーバーの場合、月額1000円~4000円がひとつの目安となります。なかには機能を大きく削ることでもっとも大幅に安くしたものもありますが、そうした例外を除けば毎月1000円程度は最低でも必要となってきます。
ただ一定以上の費用が必要となる反面、レンタルサーバーの代表的機能は一通り揃っています。あとはサービス・プランごとに、ディスク容量やデータベース数などの純粋なスペック、あるいはバックアップ期間やサポート体制などの補助的な機能で選び分けることになります。

・参考記事:法人向けレンタルサーバーの価格相場

補足:価格差の理由について

同じ企業の運営するサービスであっても、法人向けと個人向けではかなりの価格差が生まれている場合もあります。ただし、だからといって価格に見合うだけの機能差・性能差があるとは限りません。

たとえば当サイトでも利用している「エックスサーバー」は、法人向けに「エックスサーバービジネス」というレンタルサーバーも展開しています。一番安いプラン同士で比べても、月額にしてなんと4倍近い価格差があります。
ですが、じつは機能面で両者に差はほとんどありません。セキュリティ対策の一環であるSSL証明書で法人向けのものを選べるなど細かな違いはありますが、サーバーの使い勝手という面ではほぼ同じです。

それでいながら価格に4倍もの差があるのは、「ホームページを無料で作ってくれる」「他社のレンタルサーバーからの移転を無料代行してくれる」などのサービスがビジネスの方には付属しているためです。昨今では個人向け・法人向けのサーバー性能に差が少なくなってきているため、こうした外部要素で差別化をしている場合も少なくありません。ただし逆に言うと、自分でいちからホームページを新規に作る予定であれば、通常のエックスサーバーでも十分なことが多いです。

このように、単純に「高いからそれだけ良いものだ」ということにはならない点には注意してください。

機能・その他の違い

次に、料金以外の面でどういった違いがあるのかについて説明します。

安定性

最近は個人向けであっても99.99%といった高い稼働率を誇るサービスも増えてきました。しかし法人向けではたんなる稼働実績にとどまらず、サーバーの負荷が高くなる機能を制限するなど、常に快適な環境が維持されるように工夫を凝らしているところが多いです。

ただし一部のサービスで見られるSLA(稼働率保証)という制度については注意してください。これは非常に誤解されやすい制度であり、過信してはいけないものです。
(参考記事:レンタルサーバーの稼働率(99.9%等)とSLA(品質保証)の誤解と真実

セキュリティ対策

個人用途のレンタルサーバーであっても、メールのウイルスチェックなどの基本機能は付属していることがほとんどです。

しかし、サーバーへの侵入を自動検知する「IDS/IPS」、あるいはウェブサイト上の脆弱性を突いた攻撃を防いでくれる「WAF」などの高度な機能は、ビジネス向けサーバーでのみ提供されるケースが多くなっています。

複数サイト運営

一契約で複数サイトを同時運営する場合、各ウェブサイトに別々の独自ドメインを割り当てるためのマルチドメイン機能が必要です。またもしWordPress等を用いるのであれば、運営サイト数に応じたデータベース数も必要になります。

しかし同時運営はサイトの数や規模によっては、サーバーにとって結構な負荷になります。そのため法人用途では、マルチドメイン数やデータベース数は(個人用途よりも)かえって少なく設定されることもあります。

独自SSL

フォームから送られる情報の暗号化等に用いられるのがSSLサーバ証明書です。しかもSSLはたんに暗号化だけでなく、サイト運営者の信頼性を証明するという役割も持っています。

しかしレンタルサーバーの多くではSSLの持ち込みは禁止されており、サーバー事業者に代理購入してもらうしかありません。この際、より信頼性の高い証明ができる「企業認証」や「EV認証」は法人向けサービスでないと提供されない場合があります。

メールの一斉送信

メーリングリストやメールマガジン機能など、メールを一斉配信する処理はサーバーにとって大きな負荷になります。

そのため安定性を大切にするビジネスサーバーでは、そもそもこうした機能を提供していなかったり、あるいはあっても登録アドレス数が少なめに制限されがちです。
(参考記事:メールマガジン等の一斉送信におすすめのレンタルサーバー

迷惑メール対策

じつは迷惑メール対策にも差があります。個人向けでも大半でスパムフィルタは搭載されていますが、フィルタソフトには無料の簡易的なものが用いられています。

一方で法人向けのなかには、99%をゆうに超える高精度のスパムフィルタを導入しているところがあります。ほとんどの迷惑メールを自動判別できるため、仕事で時間をとられがちなメール処理が格段に速くなります。
(参考記事:誤検知ほぼゼロ!迷惑メール対策に優れたレンタルサーバー

サポート体制

個人向けでは、サポート体制はサービスごとにかなりばらつきがあります。メールサポートのみという場合もあれば、全プランで電話対応してくれるところもあります。

一方で法人向けでは、電話サポートもまず間違いなく付いています。さらにサービスによっては夜間の受付にも対応しているなど、より手厚い体制を敷いています。

まとめ

重要なデータを扱ったり、あるいは落ちては困るようなサイトを運営するという場合には、やはり信頼性の高い法人向けレンタルサーバーが安心と言えます。毎月1000~4000円程度と多少高くなってしまいますが、それに見合う価値は必ずあります。

なお、個人であっても法人向けサーバーを契約することは可能ではあります。しかし、法人向けを使わなければならない特別な理由がないかぎり、無理して導入する必要はないでしょう。サーバーの性能も年々上がっているため、(そのサイトの重さにもよりますが)月間数十万PVなどでも個人向けで捌けることもあります。
それでも不安な場合は、ConoHa WINGのようなプランにあわせてメモリや仮想CPU数が増強されるサービスを選ぶと良いでしょう。必要に応じて上位プランに移行することで、かなりの大規模サイトでも運用に耐えられます。

大切なのは予算と目的に応じて、自分にあったレンタルサーバーを選ぶということです。なお具体的にどの会社のどのサービスを選んでいいのか迷ってしまうという場合には、下記のランキングも参考にしてください。

・個人向けレンタルサーバーランキングとその理由

・法人向けレンタルサーバーランキングとその理由