レンタルサーバーの乗り換えの多くは、いま使っている独自ドメインはそのままで、中身を置くサーバーだけを移す作業です。うまく切り替えれば、サイトのURLもメールアドレスもこれまでと変わりません。
いまはWordPressのサイトを別のサーバーから自動で移せる機能が大手でほぼ標準になり、サイトそのものの引っ越しは昔よりずっと楽になりました。一方で、つまずきやすいのは「メールの引き継ぎ」「ネームサーバー(DNS)を切り替えるタイミング」「いまの契約の解約とドメインの扱い」の3つです。この記事では、そこを中心に失敗しない順番を説明します。
乗り換える前に確認しておくこと
いまの契約の期限と、解約しても返金されないこと
レンタルサーバーの料金は、半年や1年などの単位で前払いしていることが多いです。途中で解約しても、すでに支払った料金は返ってこないことが多いです。たとえばエックスサーバーは支払い済みの利用料金を返金しておらず、ConoHa WINGの長期契約「WINGパック」は契約期間の途中での解約ができません。
そのため、いまの契約が切れる前に引っ越しを終えられるよう、更新日から逆算して作業を始めるのがむだのない進め方です。クレジットカードなどで自動更新になっている場合は、手続きが間に合わずに次の期間のお金が引き落とされてしまわないよう、更新日の前に余裕をもって動き出してください。
ドメインをどこで管理しているか
独自ドメインを、サーバーとは別のドメイン会社で取ったのか、いまのサーバー会社で取ったのかを確かめておきます。とくにサーバーの契約特典でもらった無料ドメインは、サーバーの契約が続いている間だけ無料になる仕組みが多いです。サーバーを解約すると、ドメインの更新に料金がかかるようになったり、別の会社へ管理を移す手続き(ドメイン移管)が必要になったりします。
なお、ドメインの管理会社を移す「移管」は、サーバーの乗り換えに必須ではありません。ドメインはいまの会社に置いたまま、ネームサーバー(DNS)の向き先を変えるだけで新しいサーバーにつなげられます。エックスサーバーの案内では、サーバーの移転とドメインの移管の両方をする場合、ドメインの期限に1ヶ月以上の余裕があればサーバーの移転を先に行い、いまの管理会社でネームサーバーを変えられないときは先にドメイン移管を行うよう勧められています。
メールを使っているか
独自ドメインのメールアドレスを使っているなら、サイトの引っ越しとは別にメールの作業がいります。WordPressを自動で移す機能を使っても、メールアドレスやこれまでに届いたメールまでは移りません。
新しいサーバーで同じメールアドレスを作り直す作業と、これまでのメールが消えないように移し替える作業の2つが必要になります。会社やお店で何人かが使っている場合は、使っている人数とすべてのメールアドレスをあらかじめ書き出しておいてください。メールをサーバーと切り離して管理したい場合は、独自ドメインのメールはどこで持つ? レンタルサーバーとメール専用サービスの選び方も参考になります。
契約者やログイン情報が分かるか
前任の担当者や制作会社が契約したサーバーを引き継いだ場合、サーバーの管理画面やドメインの管理画面に入るためのIDとパスワードが分からないことがあります。ここに入れないと、データを移すこともネームサーバーを切り替えることもできません。
まずは契約書や引き継ぎの資料を探し、ログインできるかを確かめてください。そもそもどこのレンタルサーバーを使っているのか分からないときは、ウェブサイトがどのレンタルサーバーを使用しているか調べる方法で調べられます。
乗り換えの流れ
1. 新しいサーバーを契約する
乗り換え先のレンタルサーバーを決めて申し込みます。多くのサービスには無料のお試し期間が用意されており、たとえばエックスサーバーなら10日間、ラッコサーバーやカラフルボックス、コアサーバーなら30日間試せます。
乗り換えの作業中は、いまのサーバーと新しいサーバーをしばらく並べて使うことになります。古いサーバーを先に解約してしまうとサイトもメールも止まってしまうので、両方の契約が重なる期間をつくって進めます。
2. サイトを移す
新しいサーバーの管理画面で、いま使っている独自ドメインを登録してからサイトのデータを移します。WordPressで作ったサイトなら、エックスサーバーやConoHa WING、ロリポップ!、ラッコサーバーなどの大手に用意されている「簡単移行」の機能を使うのがいちばん手軽です。元のサイトのURLやWordPressのログイン情報を入力するだけで、ファイルやデータベースがほぼ自動で新しいサーバーへコピーされます。
WordPressを使わずに作ったサイトや、簡単移行が使えない場合は、手作業で移します。FTPソフトを使っていまのサーバーからサイトのファイルを自分のパソコンへダウンロードし、それを新しいサーバーへアップロードします。データベースを使っているサイトなら、管理画面からデータを書き出して、新しいサーバーのデータベースへ読み込ませる作業もあわせて行います。
3. メールアドレスを同じ名前で作る
独自ドメインのメールを使っている場合は、新しいサーバーの管理画面でも、いま使っているものとまったく同じ名前のメールアドレスを作っておきます。これをしておかないと、あとでネームサーバーを切り替えた瞬間からメールが届かなくなってしまいます。
アドレスを新しく作ると、メールのパスワードや送受信のサーバー名は新しいものに変わります。自分以外のスタッフもメールを使っているなら、新しい設定の情報と、いつから設定を変えてもらうかを伝える準備をしておきます。
4. 切り替える前に表示を確かめる
データを移したら、一般の人が見る向き先を切り替える前に、新しいサーバー側できちんとサイトが表示されるかを確かめます。ネームサーバーを変える前でも、自分のパソコンからだけ新しいサーバーのサイトを見られる確認用の仕組みが、多くのレンタルサーバーに用意されています。画像が抜けていないか、リンクが切れていないかを一通り見ておきます。
また、サイトを暗号化する無料の独自SSLも、切り替えの前に設定できるサービスがあります。たとえばエックスサーバーでは、サーバー移転の前に無料独自SSLを事前設定できるようになっています。先に入れておくと、ネームサーバーを切り替えた直後にブラウザで「保護されていない通信」と表示されてしまう時間を減らせます。
5. ネームサーバー(DNS)を切り替える
新しいサーバーでのサイトとメールの準備ができたら、ドメインを管理している会社の画面に入り、ネームサーバー(DNS)を新しいサーバー指定のものに書き換えます。基本的な仕組みはネームサーバー(DNSサーバー)の設定とはで説明しています。
ネームサーバーを書き換えても、世界中のネットワークにその情報が行き渡るまでには少し時間がかかります。エックスサーバーの案内では、行き渡るまでの目安は約1日とされています。その間は、サイトを見る人やタイミングによって、古いサーバーと新しいサーバーのどちらにつながるかが分かれる状態になります。反映の仕組みについては独自ドメインが反映されるまでの時間についてもあわせて読んでみてください。
6. しばらくしてから古いサーバーを解約する
ネームサーバーを切り替えた直後は、サイトだけでなくメールも、送ってきた相手によって古いサーバーと新しいサーバーのどちらかに届きます。数日たてば新しいサーバーにだけ届くようになりますが、それまでは両方のサーバーのメールを受け取れるようにしておきます。
切り替えが終わって数日たち、古いサーバーに届いたメールを取りこぼしなく確認できてから、古いサーバーの解約手続きをします。たとえばエックスサーバーでは、利用期限から一定期間たつとサーバーが凍結されて入れなくなります。必要なデータやメールが残っていないかを最後に確かめてから手続きをしてください。
つまずきやすいポイント
メールの移し替え
メールを「IMAP」という方式で読んでいる場合、メールの本体はパソコンやスマホではなく、レンタルサーバーの上に置かれています。そのため、なにもせずに古いサーバーを解約すると、これまでのメールがすべて消えてしまいます。メールソフトで古いサーバーと新しいサーバーの両方のアカウントを登録し、古い方のフォルダから新しい方のフォルダへメールを移すか、自分のパソコンの中に保存しておく作業がいります。IMAPの仕組みはIMAPの意味と活用方法で詳しく扱っています。
一方、「POP」という方式でパソコンにメールをダウンロードして読んでいるなら、これまでのメールは手元のパソコンに残っています。この場合は、メールソフトの接続先を新しいサーバーの情報に書き換えるか、新しいアカウントを追加するだけで構いません。なお、サーバー会社の自動バックアップ機能にはメールが含まれないこともあるので、要注意!レンタルサーバーの自動バックアップ機能ではメールが保存されないときがあるも知っておくと失敗を防げます。
切り替えの最中は更新しない
ステップ2でサイトを新しいサーバーへ移してから、ステップ5のネームサーバーの切り替えが完全に行き渡るまでの間は、サイトの記事を更新したり、新しいコメントを受け付けたりしないようにします。この期間中にサイトが書き換わると、古いサーバーと新しいサーバーの内容がずれてしまうためです。
とくに、ネームサーバーが切り替わっている途中の約1日間は、アクセスする人によって古いサーバーと新しいサーバーのどちらかが表示されます。もし古いサーバー側で記事を直したりコメントがついたりしても、それは新しいサーバーには引き継がれません。データを移す作業を始めたら、切り替えがすっかり終わるまではサイトを触らない期間と決めておくのが確実です。
キャンペーンの条件
乗り換え先のレンタルサーバーで、初期費用無料や割引、キャッシュバックなどのキャンペーンをやっていることがあります。ただ、とくにキャッシュバックは、申し込んですぐにもらえるわけではなく、一定の期間使い続けることが条件になっているものもあります。
たとえばエックスサーバーの過去のキャッシュバックキャンペーンでは、申し込みから満6ヶ月以上利用したあとに申請ができ、その時点でサーバー契約が終わっている場合は対象外になっていました。いつ、どのような手続きをすれば受け取れるのか、申し込む前に条件の細かいところまで目を通しておいてください。
乗り換え先の選び方と、任せる方法
これから乗り換え先のサーバーを選ぶなら、個人のブログやサイトであれば個人向けレンタルサーバーランキングとその理由、会社やお店のサイトであれば法人向けレンタルサーバーランキングとその理由を参考にしてください。大手ならたいていWordPressの簡単移行を備えているので、表示の速さや料金、サポートの体制などで選んで問題ありません。
もし自分や社内のスタッフだけで引っ越し作業をするのに自信がなければ、サーバー会社に作業を代わってもらう方法もあります。たとえば法人向けのXServerビジネスではサーバー移転代行が10件まで無料でついており、ラッコサーバーには1サイト22,000円のサーバー移転代行オプションが用意されています。サイトを止められない会社のホームページや、設定に時間をかけられない場合は、こうしたサービスに任せるのもひとつの手です。
まとめ
レンタルサーバーの乗り換えは、専門的な作業に見えるかもしれませんが、やるべきことを順番どおりにひとつずつ進めれば難しいものではありません。新しいサーバーを契約してサイトとメールの準備を整え、ネームサーバーを切り替え、落ち着いてから古いサーバーを解約するという流れを守れば、サイトもメールも止めずに引っ越せます。
失敗しないためのカギは、「いまの契約の期限から逆算して始めること」「サイトだけでなくメールの引き継ぎを忘れないこと」「切り替えのあと、古いサーバーをすぐに解約しないこと」の3つです。まずはいま使っているサーバーの更新日と、ドメインやメールの状況を書き出すところから始めてみてください。
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