レンタルサーバーの公式サイトを見ていると、「nginx採用」「LiteSpeed搭載」「高速NVMe」「独自のキャッシュ機能」といった言葉が並んでいます。ただ、どれがどう違うのか、自分のサイトにどれが必要なのか見当がつかない方もいるはずです。
こうした言葉の違いは、単なる宣伝文句ではなく実際の使い勝手に関わってきます。ただし、どんなサイトでも常にその違いが感じられるわけではありません。普段使っていて差を感じる場面と、差を感じにくい場面があります。
この記事では、サイトを運営していて実際に起きることから順に、その理由と選ぶときの見方を説明します。
速さの差が出る場面、出にくい場面
アクセス数がそれほど多くないサイトを閲覧しているだけなら、現在の主要なサービス同士で体感できるほどの差はほとんどありません。文字と画像がいくつか並んでいるだけのページであれば、どのレンタルサーバーを選んでも素早く画面に届きます。
あらかじめ保存されたデータをそのまま送るキャッシュが効いているページも同様です。HTMLだけで作られたサイトも、サーバーが計算する必要がないため、性能による差は出にくくなります。
一方で、画面を開くたびに待たされると感じる場面もあります。たとえば、WordPressの管理画面にログインして記事を保存するときや、プラグインの設定画面を切り替えるときです。
訪問者ごとに表示する中身を変える会員制サイトや、ネットショップの買い物かごなども差が出やすい場所です。訪問者がサイト内検索を行ったり、SNSで投稿が広まってアクセスが一気に押し寄せたりしたときにも違いが現れます。
こうした場面では、訪問者が訪れるたびにサーバーがプログラムを動かし、データベースに問い合わせてページを組み立てています。この計算や組み立てをどれだけ速くさばけるかが、レンタルサーバーの性能差として現れてきます。
自作のPHPプログラムやEC-CUBEなどのネットショップでも、注文履歴や会員情報を取り出すたびにサーバーが計算を繰り返すため、サーバーの性能が買い物の快適さに直結します。PerlによるCGIで作られた問い合わせフォームや掲示板も、投稿のたびにプログラムを立ち上げて動かすため、サーバーの性能によって反応の速さが変わってきます。
ソフトの違い:Webサーバーとキャッシュ
Webサーバー(Apache・nginx・LiteSpeed)
訪問者がブラウザでサイトを開いたとき、最初に応対してページの内容を届けてくれるのがWebサーバーと呼ばれるソフトウェアです。この仕組みの違いが、混雑したときの安定感や管理画面の作業感に関わってきます。
古くから使われているApache(アパッチ)は機能が豊富で細かい設定がしやすい一方、nginx(エンジンエックス)はたくさんの人が同時にアクセスしたときの整理を得意としています。LiteSpeed(ライトスピード)は、Apacheと似た扱いやすさを保ちながら、同時アクセスへの強さと処理速度を高めたソフトです。
現在のレンタルサーバーでは、これらを組み合わせて使っているところが多く見られます。同じ会社でもプランによって使われているソフトが異なる場合もあり、たとえばロリポップ!では上位のハイスピードプラン以上でLiteSpeedが使われています。
キャッシュ(いちばん体感に効くところ)
レンタルサーバーで表示が速くなったと感じる理由の多くは、キャッシュという仕組みにあります。キャッシュとは、一度プログラムが計算して作ったページや画像などを一時的に保存しておき、次の訪問者にはそれを使い回して見せる仕組みです。
この仕組みが働くと、サーバーが毎回ゼロからページを組み立て直す必要がなくなるため、2回目以降の表示速度が上がります。アクセスが集中したときでも負荷を抑えられるため、サイトが重くなったりエラーで止まったりする事態を防ぎやすくなります。
ただし、困ることもあります。使い回すデータを覚えているため、デザインや画像を直したのに、しばらく古い表示のままになってしまうことがあります。
また、訪問者ごとに異なる中身を表示するページでは、同じデータを使い回せません。ログイン中の画面や買い物かごのページでも画像などはキャッシュされますが、ページそのものは速くなりません。
たとえばエックスサーバーの「Xアクセラレータ」は、画像などを短い時間(2分)覚えておいて使い回し、PHPの処理も速くする機能です。ただ、公式マニュアルにも案内があるように、会員制サイトやショッピングサイトのように訪問者ごとに内容が変わるページでは効果が出づらい場合があります。
WordPressで表示を速くするためにキャッシュ用のプラグインを入れるなら、サーバーによって合うものが違う点にも注意が必要です。たとえば「LiteSpeed Cache」は、ページを丸ごと覚えておく機能がLiteSpeedのサーバーでしか働きません。まずはサーバーが用意しているキャッシュ機能を使い、プラグインを重ねないほうが「直したのに反映されない」といったトラブルで悩まずに済みます。
中身の違い:CPU・メモリとストレージ
CPU・メモリ
レンタルサーバーの使い心地を裏で支えているのが、コンピューターとしての基礎体力であるCPUとメモリです。これらに余裕がなくなると、管理画面での下書き保存に時間がかかったり、画像のリサイズやバックアップの処理が止まったりします。
アクセスが同時に押し寄せたときに計算が追いつかず、エラー画面が表示されてしまうのも、主にCPUとメモリの不足が原因です。一般的な共用サーバーは1台のコンピューターを大勢の契約者で分け合って使うため、ほかの利用者の影響を受けることがあります。
そこで見ておきたいのが、スペック表のCPU・メモリの数字が「保証」なのか「目安」なのかです。エックスサーバーは新しいサーバーでは、プランごとのCPU・メモリを「保証値」として公表しています(スタンダードプランで仮想6コア・メモリ8GB)。
ほかにも、CPUやメモリを契約ごとに確保するプランとして、ConoHa WINGやシンレンタルサーバーのビジネスプラン、KAGOYAなども選べます。安定した速度を常に保ちたい場合は、こうしたリソースが確保されたプランを検討するのもひとつの方法です。
ストレージ(SSD・NVMe)
データを保管するストレージも、サーバーの速度を左右する部品です。現在の主流なレンタルサーバーではSSDが使われており、一般的なブログ記事を読む程度であればSSD同士の差は大きくありません。
そのSSDの中で、読み書きをさらに高速化した規格がNVMe(エヌブイエムイー)で、エックスサーバーやmixhostなどが採用しています。NVMeの速さが生きてくるのは、記事数が数千件あるブログや多数の商品を扱うネットショップなど、データベースを頻繁に読み書きする場面です。
管理画面でたくさんの記事を一括更新したり、過去の投稿を検索したりするときに、データベースの応答が早いため作業が滞りにくくなります。画像や文字を表示するだけでデータベースをあまり使わないサイトであれば、通常のSSDとNVMeの違いは体感しにくいといえます。
HTMLだけのサイトなら、ファイルを読み出して送るだけなのでCPUのコア数やメモリの多さはあまり影響しません。しかし、ネットショップや自作PHPでは購入や検索のたびに計算と読み書きが起きるため、CPUやメモリの余裕が買い物の快適さを守る鍵になります。古いCGIを安定して動かしたい場合も、処理能力の高さやリソースの確保が役立ちます。
回線などの違い
回線(バックボーン)
サーバー本体の処理が速くても、インターネットをつなぐ回線が細ければ訪問者にデータは素早く届きません。この通信網の太さや品質は、バックボーン(基幹回線)と呼ばれます。
ABLENETのように、大手通信事業者3社の回線に接続していることを公表しているサービスもあります。複数の通信網に接続されていれば、どこか1社で障害が起きても別のルートで通信を維持しやすくなります。
普段の閲覧で回線の太さによる差を感じることは多くありません。回線の強さが問われるのは、テレビやSNSで話題になってアクセスが殺到したときや、大きな動画やファイルを大勢に配布する場面です。
CDNとHTTP/2・HTTP/3
混雑を避けてデータをスムーズに届ける技術として、CDN(シーディーエヌ)や新しい通信方式があります。これらもサイトの性質によって役立つ場面が異なります。
CDNは、画像などの複製を各地の中継サーバーに預け、訪問者に近い場所から代わりに届ける仕組みです。元のサーバーへの負担が減るため、アクセスが集中したときでもサイトの表示を維持しやすくなります。
HTTP/2やHTTP/3は、サーバーとブラウザの通信方式を新しくした規格です。複数のファイルを同時にやり取りできるため、写真が多いページなどで読み込みの引っかかりを減らすのに役立ちます。
速度比較の記事やランキングを読むときの注意
ネット上には、Webサイトの表示時間を測定したグラフやランキング記事が多く見られます。数字が出ていると優劣が分かりやすく感じられますが、測定の条件によって結果が変わる点には目を向けておきたいところです。
たとえば、キャッシュが有効な状態で測っているのか、無効な状態で測っているのかによって数値は大きく違ってきます。また、使っているWordPressのテーマやプラグインの構成、計測した時間帯や測定回数によっても結果は変わります。
比較記事を読むときは、どのような条件で測定されているかが丁寧に書かれているものを見ると、自分のサイトの環境に近いかどうかを判断しやすくなります。
まとめ:サイトの種類ごとの見方
レンタルサーバーの速さは、ひとつの要素だけで決まるものではなく、サイトの作りや使われ方によって着目すべき場所が変わります。
HTMLで作られたシンプルなサイトであれば、どの主要サーバーでも十分な速度が得られます。WordPressのブログや会社案内なら、サーバー標準のキャッシュ機能の扱いやすさを基準にすると運用の負担を減らせます。
会員制サイトやネットショップ、自作PHPのように計算や更新が多いサイトでは、CPU・メモリの保証やNVMeストレージの有無が大切です。自サイトがどの場面でサーバーに負担をかけるのかを考えて選ぶと、無理のない費用で快適な環境を見つけやすくなります。
こうした仕組みを踏まえて、どのサービスが速いと言えそうかは「表示速度で選ぶおすすめのレンタルサーバー」で紹介しています。
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