WordPress.comとは? 通常のインストール型との違いを徹底解説

ウェブサイトやブログを作る際、レンタルサーバーに「WordPress」をインストールして運用するというのはごく一般的になっています。

しかしこうした一般的な方法とは別に、「WordPress.com」というサービスを利用する方法もじつは存在します。

ここでは両者がどのように違うのかについて詳しく解説します。

※以下、説明を分かりやすくするために用途をブログと仮定して話を進めていきます。

インストール型と外部サービス型の違い

そもそも利用形態が違う

さて名称が非常によく似ているため混乱しがちですが、両者は大きく異なるものです。

なぜなら、そもそも通常の「WordPress」というのは、サーバーにインストールする「ソフト(アプリ)」です。しかしながら、「WordPress.com」の方はアメブロやlivedoorブログのような、「ブログサービス」の一種だからです。

  • WordPress(インストール型):サーバーにインストールして使うブログ管理ソフト
  • WordPress.com:ブログサービスの一種

利用形態の違いのイメージ図

この点について、もう少し詳しく説明します。

インストール型を使うには(レンタル)サーバーが必要

繰り返しになりますが、通常のWordPressはたんなるソフトです。パソコンにウイルス対策ソフトをインストールするのと同様に、サーバーにインストールすることでブログ作成・管理ができるようになります。

ということは、まずインストール先であるサーバーを用意しなければなりません。ただサーバーを自前で用意して管理するのは大変なので、かわりに専門の事業者から借りてくる「レンタルサーバー」を使うことが多いです。

よって、まず土台であるレンタルサーバーを借りてきて、そこにソフトをインストールして、それからブログを作るという流れになります。

外部サービス型を使うには会員登録するだけ

一方でWordPress.comというのは、たんなるブログサービスです。つまり、動かすのにあたってサーバーをレンタルするなどの余計な作業は不要です。無料ブログを利用するのと同じ感覚で、会員登録だけすれば即座にブログを作ることができます。

なぜそんなに簡単に利用できるかというと、土台となるサーバーはすでにサービス側が用意しており、そこに(通常のソフトである)WordPressもインストール済みだからです。

※実際にはたんにインストールしているだけでなく、独自のカスタマイズをかなり施しています。とくに2015年11月以降は本家とはコア部分から違っています。

補足:運営組織についての違い

ちなみにWordPress.comについてですが、その名称から本家(通常のインストール型ソフト)と同じ組織が運営しているのかと思われがちですが、これは微妙に違います。

というのも、WordPress本体そのものはオープンソースで開発が進められている無料ソフトです。だからソフトが配布されている「WOREPRESS.ORG」というウェブサイトもコミュニティによって運営されています。

一方で.comのサービスの方は、Automatticという企業が運営しています。後述しますが、無料版以外に有料プランも存在するため、そこからは収益も得ています。

ただややこしいことに、WordPress創始者であるMatt Mullenwegという方は現在は.comの方の運営会社のCEOを務めています。また本家サイトのフッタからもリンクがしっかり貼ってあったりします。

なので「本家とは運営組織は別物だが、切っても切れない関係にある」ぐらいの認識でいいのかなと個人的には考えています。

WordPress.comのメリット

ここからはインストール型と比較しての、WordPress.comのメリットおよびデメリットについて詳しく解説していきます。まずはメリットからです。

無料でブログを作成できる

最大のメリットはやはり無料で利用できることです。通常のWordPressはソフト自体は無料ですが、そのインストール先となるレンタルサーバーを借りる段階で費用が必要になります。

最近のレンタルサーバーでは月額300円以下でもある程度快適に運用できますが、それでも「有料」と「無料」の壁というものは存在します。とにかく費用をかけたくない、あるいは試しに少し使ってみたいだけという方には最適です。

無料ブログ感覚で手軽に使える

またWordPress.comはつまりブログサービスですから、誰でも手軽に利用できます。それこそパソコン初心者やインターネット初心者であっても、アメブロなどの無料ブログに記事を書くのと同じような感覚で、簡単にブログを作成できます。

WordPress.comのデメリット

一見するとWordPress.comは無料&手軽で良いことばかりに思えます。ただ、デメリット面に目を向けるとまた話が違ってきます。というのも、多くの「制限」と「有料版への誘導」があるからです。

プラグインが自由にインストールできない

プラグイン関連の違い

もっとも大きな問題点が、プラグイン(拡張機能)を自由にインストールできないということです。

本来のWordPressは、プラグインと呼ばれる拡張機能を導入することで、ソフト本体だけでは成しえなかった多くの機能を実現できます。プラグインは全世界で何百・何千と開発されており、そのほとんどを無料で利用できます。

しかしWordPress.comでは、プラグインは「JetPack」と呼ばれるパッケージに含まれる既定のものしか利用することができません。JetPackには一応30種類以上のプラグインが入ってはいるのですが、(管理人の私見ですが)かなり玉石混交です。

たとえばコンタクトフォーム作成や簡易アクセス解析などは多くの人が求めるもので良いと思うのですが、なかには画像のフルスクリーン表示、メールからの記事投稿など使う人を選びそうなものもあります。また数式表示プラグイン、JSON API対応など、ごく一部の人に向けたような機能も含まれます。こうしたものをすべて含めて30種程度ですから、実用性がそこまで高いものではありません。

実際のところ、当サイトもWordPressで動かしてさらにプラグインを入れていますが、JetPackに含まれないものが大多数です。たとえばSEO対策の人気プラグイン「All in One SEO Pack」、スパムコメントを自動判定で弾いてくれる「Akismet」など、超定番と言われるようなプラグインですら利用ができません。

WordPressの本来の良さは自由に機能を拡張できることにありますから、プラグインがインストールできないというのは、それだけで大きなデメリットになってしまいます。

テーマを自由に追加できない

また同じように追加できないものとして、テーマ(ブログのデザイン・見た目)があります。

このテーマに関してもプラグイン同様、既定のものからのみ選べるという仕組みになっています。一応用意されているテーマは377種類ありますが、これも通常のインストール型であれば全世界の数千を超えるテーマから選べます。その自由度の差は明らかです。

また377種類と書きましたが、これはじつは無料版と有料版を足しての数です。無料で使えるものは193種類に限られており、残り184種類に関してはそれぞれ個別に利用料がかかります。価格はテーマごとに違いますが、安いものでは10~20ドル台、多くが50~80ドル程度、なかには100ドルをゆうに超えるものもあります。

※上記のテーマ数および価格については、記事執筆時の2016年1月時点での情報に基づくものです。

ディスク容量が少ない

スペック面では、ディスク容量が少ないことが気になります。
WordPress.comの無料版ではディスク容量は3GBまでとなっています。たしかに3GBあれば、画像をそこまで多用するブログでなければ問題なく運用はできます。

ただ、いまは無料ブログであってももっと多くの容量が使える時代です。たとえば2016年現在、アメブロ・FC2・livedoorいずれも無料会員で10GBの保存容量があります。こうした現状と比べてしまうと、さすがに3GBというのは見劣りしてしまいます。

WordPress.comでも有料会員(プレミアム版)になれば13GBまで増えるのですが、そうなると結局毎月1000円程度の費用が発生してきます。それならば同じく月1000円程度で使えるレンタルサーバー、たとえばエックスサーバーを借りれば容量は200GBも利用できます。じつに15倍以上の容量差がついてしまいます。

独自ドメインの設定は有料

それから非常に大きな問題として、無料版では独自ドメインが設定できないということが挙げられます。

WordPress.comで無料でブログを開設する場合、ブログのURL(アドレス)は「******.wordpress.com」という形式になります。

「******」の部分には自分で好きな文字列を設定することができるのですが、結局はそのアドレスは本体である「wordpress.com」というドメインに紐づいています。そうなるとwordpress.comが閉鎖となればこのアドレスは使えなくなります。また通常のレンタルサーバーに乗り換えようと思った際なども、このアドレスを引き継ぐことができません。

こうなるとアクセスしてくれるユーザーを失うだけでなく、GoogleからのSEO上の評価なども失ってしまいます。

これを防ぐには、最初からオリジナルのドメイン名(独自ドメイン)の割り当てが必要です。しかし独自ドメインをwordpress.comで設定する場合、(ドメイン自体の取得費用とは別に)設定自体に最低でも年間1600円~の費用がかかります。やはりここでも、完全に無料のままで利用できなくなってしまいます。

その他の注意点

そのほか細かい注意点として、ブログに勝手に広告が表示されることがあります。これは企業が運営しているわけですから、その収益のためです。この点はアメブロなどの無料ブログと同様です。

またテーマの編集に関しても、(有料プランにしたとしても)CSSと呼ばれる見た目の変更にしか手を加えることができません。そのためHTMLファイルに直接手を加えるような操作ができません。そのため、たとえば高機能アクセス解析として定番のGoogleアナリティクスなど、HTMLにコードを埋め込む必要があるサービスは利用できません。

まとめ

やはり通常のインストール型がおすすめ

このようにWordPress.comというサービスは、通常のインストール型と比較すると多くのデメリットを抱えています。

もちろん無料や手軽さというメリットもあるのですが、プラグインが自由に使えないなどの問題点はあまりに大きいです。当サイトにしても、明日から急にほとんどのプラグインが利用禁止になったらと思うと、ぞっとするほどです。

そのためやはり本来の手順に従って、レンタルサーバーを借りて、そこにインストールして使うのがおすすめです。

WordPress利用に適したレンタルサーバーの条件

なおサーバーやインストールと聞くと難しく感じて敬遠してしまう方もいるかもしれませんが、現在のレンタルサーバーではWordPressの利用は本当に簡単になっています。

とくに「自動インストール機能」を提供しているレンタルサーバーの場合、管理画面にログインしてボタンをクリックすれば、それだけでインストール作業を全自動で行ってくれるという親切設計になっています。

具体的には当サイト自体も運営に使っているエックスサーバーがまず一番におすすめです。月額1000円程度のサーバーとは思えないほどの高速性・安定性を誇り、それこそ格安系レンタルサーバーとは一線を画しています。もちろん自動インストール機能もついているので、初心者の方でも安心して利用できます。