完全理解!レンタルサーバーのバックアップ体制とその選び方

レンタルサーバーでは利用者のファイルやデータが失われることがないように、様々な対策を行っています。ただしサービスによって対策の種類や方法にばらつきが出やすい部分でもあり、単に「バックアップをとっています」という文言だけを過信して選ぶのは危険です。

そこでこの記事では、レンタルサーバーにおけるデータを守るための仕組みについて解説します。全体像をしっかり把握しておくことで、自分に最適なサービスを安心して選べるようになります。

データを守るための仕組みは大きく分けて2通り

まず最初に知っておくべきことは、データを守るための機能は大きく二つに分けられるということです。

  • RAID(レイド)
  • 外部バックアップ

この二つはデータを守るという大きな目的は共通していますが、実装のされ方も、またどのようなリスクに対応できるのかという点も異なります。以下、それぞれの方法について詳しく見ていきます。

ハードディスクの故障に備えるRAID

RAIDは、サーバーマシンの中でハードディスク(HDD)を複数同時に使う機能です。どのように実装・運用するかによって、RAID0、RAID1、RAID5…など、さらに種類がこまかく分かれています。

ただしレンタルサーバー選びということに話を絞った場合、もっとも重要なのは「RAID1」になります。

RAID1はハードディスクの二重化


RAID1は「2台以上のハードディスクに同時にデータを書き込む」方法です。
たとえばA・Bという二台の内蔵HDDが搭載されていた場合、いついかなる瞬間もA・Bそれぞれにまったく同一のデータが保管されていることになります。

この方法のメリットはハードディスクの故障に備えられるということです。もしAのディスクが突然に壊れてしまっても、残ったBだけでサーバーは稼働しつづけます。そのあいだに壊れたAのディスクを新しいものに取り換えれば、再び二台体制で運用が続けられます。

つまりディスクが2台同時に壊れてしまわないかぎりはデータが失われることはありません。
※実際にはさらに耐障害性を上げるために3台以上で運用することもあります。

もしレンタルサーバーの公式サイトなどで「RAIDで運用しています」といった記載があった場合、この「RAID1」を暗黙的に示していると考えられます。またより分かりやすく表現するために「ハードディスクの二重化」や「ミラーリング」といった記載になっている場合もあります。

RAID1以外の運用方法

なお他にもRAID5やRAID6など様々な実装方法があります(RAID2~4はまず利用されていません)。この記事ではRAIDの仕組みそのものには深くは踏み込みませんが、RAID1に比べてディスクの利用効率を高める工夫をしたのがRAID5であり、その応用がRAID6と言えます。
※信頼性という面ではRAID5はRAID1に劣る部分があります。なおRAID6になると(RAID1を何台で運用しているかなどの問題も絡み)一概には答えを出しにくくなります。

なおRAID0という、耐故障性ではなくディスクアクセス速度の向上のみを目的とした実装方法もなかにはあります。ただしレンタルサーバーでRAID0のみが使われることはまずなく、使われるとしてもRAID1との組み合わせ(RAID10/1+0)がほとんどです。RAID10の場合はRAID1を改良したものと理解していただいて構いません。

サーバーマシン外部への自動バックアップ


データを守るためのもうひとつの大切な仕組みが外部バックアップです。
これは内蔵HDDを複数使用していたRAIDと異なり、サーバーマシン外部のディスクに定期的にデータをコピーしておく仕組みです。

外部バックアップも必要な理由

前述のRAIDは、ハードディスクの故障によってデータが失われるのを防ぐ仕組みでした。しかしデータが失われる原因は他にも考えられます。たとえば本来あってはいけないことですが、ウイルスの混入によるデータ削除、不正侵入によるファイル改ざん、さらに他にもユーザー自身の誤操作によるファイル削除や上書きがありえます。

ですが、RAIDだけではこうしたトラブルに対応できません。なぜならRAIDは「常に同時にデータを書き込む仕組み」です。つまり、ウイルスでも誤操作でもファイル削除の命令が実行されると、すべてのディスクで同時に削除が行われ、元ファイルがなくなってしまうからです。

こうしたリスクに対処するには、リアルタイムにデータを同期させるRAIDではなく、過去のある時点のデータを定期的に保管するバックアップが有効です。だからRAIDと外部バックアップは「両方の機能が実装されていてこそ安心」と言えます。

要確認!データ復元への対応状況

ただし「定期的に外部ディスクへ自動バックアップを行っています」と記載があっても、それだけで安心するのは禁物です。ここは非常に大事なポイントです。

なぜならレンタルサーバーのバックアップデータには2種類あるからです。

  • サーバー事業者側の管理・運用のためのみに保管されているもの
  • ユーザー側が要求すれば、データ復元(リストア)に応じてくれるもの

前者のデータは、たとえばサーバー事業者側でのトラブルや不手際など、なにかしらの問題が起こった際には復旧に利用されます。しかし、ユーザーが間違えて大事なファイルを削除してしまったなど、そうした誤操作に対してはなんの対応もしてくれません。あくまでもそのバックアップは「事業者(管理者)側のためだけのデータ」だからです。

一方で後者のデータは、ユーザーのためにも提供されるバックアップです。つまり間違ってファイルを削除した場合でも、ユーザーが管理画面などから操作や申請を行えば、過去のある時点のファイルを取り戻すことができます。

以前は前者の形態でしか提供されないことが普通でしたが、近年ではユーザーの要求によるデータ復元(リストア)にも対応してくれるサービスが少しずつ増えてきています。

バックアップの世代数

ただしデータ復元に対応しているといっても、無限に過去まで遡って元に戻せるわけではありません。これはサーバー側でもディスク容量節約のために、古いデータは順次削除していくためです。

どのぐらい前まで戻せるかはレンタルサーバーによって異なりますが、このときに基準となるのが「バックアップの世代数」です。たとえば「一日一回のバックアップを7世代分」とあれば、つまり過去7日間分のデータがそれぞれ保管されており、そのいずれの時点にも復元できるということです。


とくに1~3日間ぐらいしか保管されていない場合、土日や連休を挟んだ週明けにデータ喪失に気づいた際には元に戻せないことがあります。そのため、なるべく多世代保管に対応しているサービスがおすすめです。

補足:ユーザー側でのバックアップについて

ここまで見てきたように、サーバー事業者側でもデータを守るための様々な対策が取られています。しかし、どれだけしっかりした対策がとられていても、やはり事故というのは起こりえます。実際、過去にも大手レンタルサーバー会社が、顧客のデータをバックアップ含めて全削除してしまうという事故がありました。

もちろんバックアップ体制がしっかりしているサービスであればあるほど大事故の可能性は少なくはなりますが、それでもやはり100%確実なものではありません。そのため本当に大事なデータは、ユーザー側でも定期的にダウンロードやエクスポートするなどの保存作業をおすすめします。

それと、受信するとサーバー上からメールを削除する設定にしている方はとくに注意してください。定期的な自動バックアップが行われても、その時点でサーバー上に存在していないメールは保管されないためです。

まとめ&おすすめサービス

レンタルサーバーにおけるデータを守る仕組みを解説してきましたが、まとめを兼ねて「結局どこがおすすめなのか」にお答えします。

CPI(10~30世代)

ビジネス向けのハイスペックサーバーとして有名なCPIレンタルサーバーでは、Webサイトの公開作業を手助けするための「SmartRelease」という機能を標準提供しています。そしてこの機能のなかには、30世代(30日間)のWEB領域のバックアップ、および10世代のMySQLバックアップが含まれます。

とくにWEB30世代というのは、他社でまず類を見ないほどの長期間保存です。もちろん復元にも対応していますので、最大で1ヶ月近く前のデータを取り戻すこともできます。

唯一注意すべきなのは、(SmartReleaseという機能自体が)最大で10GBまでが対象ということです。とはいえ多くのウェブサイトでは10GBも容量を使うことは少ないため、バックアップを重視するならやはり一番におすすめのサービスです。

ConoHa WING(14世代)

次におすすめなのが、ここ数年で一気に人気サービスに躍り出たConoHa WINGです。
まずRAIDについては、RAID1に高速化を組み合わせたRAID10を採用。外部バックアップについては、Webサイト・メール・MySQLデータベースの3つすべてにおいて、それぞれの14日間分のデータを保管してくれます。そのうえデータ復元も無料となっており、バックアップに関してはほぼ文句のつけようがない状態です。

CPIに比べると保存期間が短めではありますが、それでも2週間と長期のため、一般的な使い方で困ることはまず考えられません。復元の手順もコントロールパネルから該当の日付を選ぶだけの簡単なものですので、いつでも気軽に利用できます。
※ただし、一週間に5回以上の復元(リストア)を行うと一定期間制限がかかります。気軽に使えるとは言っても、基本的にはトラブル時の保険として考えるべきです。

エックスサーバー&Xserverビジネス(14世代)

 

当サイトでも利用しているエックスサーバー、そしてその法人向けブランドであるエックスサーバービジネスも長期バックアップに対応しています。

どちらもRAID10構成、さらにメール・Web・データベースすべてにおいて14世代分の外部バックアップを保管しています。

バックアップ環境はすべてのプランに標準で組み込まれており、手続きや設定なども不要です。
また以前はデータ復元に費用がかかるのが難点ではありましたが、2020年9月から復元も完全無料となっています。当サイトの管理人も、このバックアップと無料復元のおかげで記事を失わずに済んだことがあります。

※利用開始時期が古い場合はWeb・メール領域のみ7世代となっていますが、順次14世代バックアップに対応する予定とのことです。

mixhost(14世代)

また中級者以上向けではありますが、mixhostも4日間という長期間バックアップに対応しています。エックスサーバー等と同じRAID10構成にくわえて、データ復元も無料となっています。

ただバックアップ期間が一時期は30日間に延長され、その後再び14日間に戻ったりといったことがあったりと変更が多いのが懸念点です。運営実績もどうしてもエックスサーバー等に比べると落ちるので、過度に信頼しすぎない方がいいかもしれないと個人的には考えています。

ロリポップ!(7世代)

低価格で始められる個人向けレンタルサーバー、ロリポップ!も7世代バックアップに対応しています。
ただし、原則として有料オプションとして別途費用(月額330円)が必要です(最上位のエンタープライズプランでのみ無料オプション扱いになります)。そのかわり復元に関しては無料で行えます。

内容を考えればオプション料金としては良心的ですが、ロリポップ!自体が月額300~500円以下のプランがメインの格安レンタルサーバーのため、毎月の費用が倍近くなってしまうのが難しいところです。またConoHa WINGなどコスパが良く、なおかつ長期バックアップで復元無料というサービスが現在は出てきているので、ロリポップ!で有料オプションをつけるよりは、そもそも別サービスを検討した方が良いケースも多いです。

なお少し扱いがややこしいのですが、上位プランでは、バックアップオプションを申し込んでいなくても万が一の際に復元をお願いできる機能もあります。ただしこちらはオプション扱いの7世代バックアップと異なり、復元が有償(11,000円)となります。