レンタルサーバー選びでアクセス解析を重視しなくていい理由

ウェブサイト運営では、日々どのぐらいのアクセスがあるのか把握しておくのは大切なことです。ただ、だからといって「アクセス解析機能がとくに優れているレンタルサーバーを選ぼう」と考える必要はありません。

なぜなら、(レンタルサーバー側で提供されるものよりも)高機能なアクセス解析を自分自身で導入できるからです。

2種類のアクセス解析ツール

じつは一口に「アクセス解析」といっても、仕組みによって幾つか種類があります。もっとも代表的なものは下記の二つになります。

  • サーバーログ型
  • ビーコン型(タグ型)

詳しくはこのあと解説しますが、レンタルサーバー側の機能として提供されるのが前者のログ型にあたります。一方で後者のビーコン型というのは、ユーザー自身がウェブサイトに埋め込むタイプのものになります。

※このほかパケットキャプチャ型という種類も存在します。ただ一般ユーザーは触れる機会があまりないものですので、ここでは説明は割愛します。

レンタルサーバーで提供されるのはログ型

ログ型解析の仕組み

そもそも「ログ」とはなにかといえば、サーバーにアクセスがあった際に、その日時・IPアドレス・URL・ブラウザ…などの情報を記録したものです。生のログそのものは、テキストデータとしてひたすら羅列されています。

アクセスログのサンプル
※アクセスログの例。画像クリックで拡大します。
※「***.***.***.***」部分については、実際にはアクセスしてきた人のIPアドレスが入ります。

ただし、この生ログは一件一件の情報を詳しく見ることはできるものの、アクセス総数の増減など全体を把握するのには向いていません。そこで、これをグラフや表など見やすい形にまとめてくれるのがログ型のアクセス解析ツールです。

アクセス解析ツールで作成されるグラフ例
※エックスサーバーで提供されているアクセス解析機能の画面。

こうしたログ型ツールの代表例としては「Analog」「Webalizer」「AWStats」があります。またこうしたツールをカスタマイズして、レンタルサーバー独自の機能として提供されている場合もあります。

ログ型のメリット・デメリット

ログ型はサーバーに対して行われたアクセスすべてを記録するため、非常に正確なデータ収集が行えるというメリットがあります。

その一方で、ウェブサイト改善のための実用的な分析が苦手、という問題点もあります。大まかなアクセスの増減や人気ページなどは把握できるのですが、たとえば「アクセスは増えたのに商品購入が逆に減ったのはなぜか」などの具体性のある分析はなかなか困難です。

なおログ型ツールであっても、企業製の高価なものではかなり深い分析ができるものもあります。ただ、レンタルサーバーの標準機能として提供されるようなアクセス解析(Analog/Webalizer/AWStats等)は基本的に無料ツールであり、分析できる範囲は限られています。

「Google Analytics」を代表とするビーコン型

ビーコン型の仕組み

ビーコン型のもっとも有名なものとしては、Googleが提供するアクセス解析ツールである「Google Analytics(グーグル アナリティクス・略称GA)」があります。

ウェブサイトのHTMLにGAのコードを埋め込んでおくと、誰かのアクセスがあった際にそのコードが実行され、訪問者に関する情報がGoogleのサーバーに送信・集計される、という仕組みです。

Google Analyticsで作成されるグラフ例
※「Google Analytics」の画面サンプル。

GAはHTMLにコードを埋め込むだけなので、どのレンタルサーバーを利用しているかといったことは一切関係なく、誰でも利用できます。

またGAは基本的に無料のツールです。一ヶ月あたり1000万PVを超える場合は有料となっていますが、一般的なユーザーにとってはまさに雲の上の数値であり、原則無料と考えて大丈夫です。

Google Analyticsのメリット

Google Analyticsの最大のメリットは、ウェブサイト改善のための分析が誰でも手軽にできるということです。

ページごとに直帰率(1ページだけ読んですぐに戻る/閉じる率)を調べたり、前年同期とのアクセス数を比較したり、リニューアル後に滞在時間が増えたかを確認したり…など、複雑に思える分析も、クリックだけで簡単に実行できます。

また(ビーコン型のなかでも)とくにGAならではのメリットとして、他のGoogle関連サービスと連携できることがあります。

たとえば「SearchConsole(サーチコンソール)」と呼ばれるサービスと組み合わせると、どういった検索キーワードで上位表示されているかなどをチェックできます。また「タグマネージャ」と組み合わせて、サイト内のリンク毎のクリック数を調べるといったことも可能です。

注意すべきことは

高機能なGoogleAnalyticsですが、幾つか注意点もあります。

第一に、コードの埋め込みはすべてのページに対して行わなければならない、ということです。もし抜けているページがあると、そのページは集計対象外となってしまいます。
※WordPress(ワードプレス)などのウェブサイト作成ツールを用いる場合は、テンプレートに埋め込めば自動的に全ページ対応となります。

またログ型に比べると正確性では劣ります。というのも、GAのコードはブラウザの設定(JavaScriptの動作の可否)によっては実行されない場合があるためです。またコードが読みこまれる前に即座に離脱されたような場合も集計できません。ただ、こうした例外的なアクセスはごく一部であるため、ほとんどの場合は問題にはならないはずです。

最後に、あくまでも外部のサービスであることが挙げられます。Googleのサーバーに送られた情報が今後悪用されないという保証はありません。また、ある日を境にサービスが閉鎖するといった可能性もあります。ただ現在では上場企業でも77.9%が導入しているといったデータもあり、リスクを鑑みても導入するユーザーが増えています。

まとめ

ここまで見てきたように、現状ではビーコン型のアクセス解析であるGoogle Analyticsが無料かつ高機能になっています。そしてGAはどのレンタルサーバーを利用しているかに関係なく導入できます。

そのためレンタルサーバー選びの際には、どういったアクセス解析ツール(ログ型)が提供されているのかといったことは気にせず、ほかの機能や価格を中心に比較・検討されることをおすすめします。