レンタルサーバーには、大きく分けて「共用」「VPS(仮想専用)」「専用」の三種類があります。しかし、近年では新たに「クラウド型のホスティング」も注目を集めています。
では従来からあるレンタルサーバーとクラウドサーバーの違いとはなんでしょうか。もちろん細かな違いはたくさんあるのですが、最大のポイントは「契約内容が固定されているかどうか」という点です。以下、詳しく解説していきます。
※補足1:一般的に「レンタルサーバー」とだけ記載がある場合、共用サーバーのみを指すこともあります。ただし本記事においてはVPSや専用サーバーを含んでいます。
※補足2:クラウドにはサーバーのようなインフラを提供するもの(IaaS)以外にも、PaasやSaaSなど複数の種類があります。ただし当記事ではクラウド型ホスティングに話を絞って解説しています。
目次
レンタルサーバーはスペックと料金が固定
記事冒頭でも触れましたが、レンタルサーバーにも共用・VPS・専用と3種類があります。しかしすべての形態にも共通するのが、契約内容が固定されているということです。この契約内容とは具体的には「スペック(性能)」と「料金」を意味します。
当サイトの実例
たとえば当サイトは、共用サーバーのひとつであるエックスサーバーのスタンダードプランを契約して運営しています。このプランではディスク(HDD)容量は200GBと決まっており、また月額も1,080円と一定です。このスペックと料金はプラン変更をしないかぎり変わらないものです。
また転送量に関しても、一日あたり70GBまでという上限目安は提示されていますが、もしこれオーバーしてしまっても、勝手に今月の支払い額が増えてしまうようなことはありません。
専用やVPSでも同様
マシンを複数人で分け合う(共用する)のではなく、一台を占有して使える専用サーバーであっても、こうしたスペックと料金の固定は同様です。
またVPSは一台のマシン上に複数の仮想マシン(仮想OS)を立ち上げて、その仮想マシン一台を貸し出すというやや特殊な形態です。しかしこの場合でも、仮想マシン一台に割り当てられるディスクやメモリ量は最初から決まっており、また料金についても一定です。
このように、従来からあるレンタルサーバーというのは、月々いくらと定められた料金のなかで、定められたスペックのマシンを利用するものです。
スペックが固定されていることの問題点
しかしスペックが固定されているということにはデメリットも潜んでいます。それは突発的・臨時的な対応ができないということです。
たとえば、なにかのきっかけで急激に自分のウェブサイトへのアクセスが増加したとします。このとき自分が契約しているレンタルサーバープランで耐えられないほどの負荷がかかると、サーバーがダウンしてしまい、ウェブサイトに繋がらなくなってしまいます。
現在でもテレビに取り上げられたり、あるいは各種タイムセールやライブのチケット販売などにおいて、こうした「サーバーが落ちてしまった」現象はしばしば見られます。
もし従来の方法でこうした突発的なアクセス増加に対応するとなると、普段からより上位のプランやサービスを契約しておかなければなりません。しかし、滅多にないそうした事態のために普段から高額のプランの料金を支払うのはコストパフォーマンスが悪いです。さらに言えば、いったいどれだけのスペックにすればサーバーダウンを防げるのかは予測が困難です。
クラウド型のメリット・デメリット
スペックを柔軟に変えられる
こうした問題を解決するためには、マシンの性能を状況に応じて一時的に変更できればベストと言えます。そこで、いつでも柔軟にスペック変更を行えるようにしたものがクラウドサーバーです。
じつはクラウドサーバーは、仕組みとしてはVPSに近いものです。つまり物理的なマシン上に複数の仮想マシンを作り、それをユーザーに提供しています。あくまでも仮想的に作られたマシンなので、じつはCPU・メモリ・ディスクなどの性能も設定次第で変えることができます。
ただVPSではあえて仮想マシンのスペックを固定した上で貸し出していましたが、クラウド型の場合はユーザー側でもいつでもスペック変更が可能になっています。またスペック変更のみならず、アクセスを複数の仮想マシンに振り分けるなどの設定も可能です。
※ここまで説明のために「スペック」という言い方をしてきましたが、実際にはCPUやメモリなどは仮想マシンの「リソース」と表現するのが一般的です。また「変更できる」といいう表現も、「スケーラブル(スケールできる)」とするのが一般的です。
請求が想定外の高額になることも
一見するとメリットばかりに見えるクラウド型ですが、注意しなければならないのが料金面です。
リソース(CPU・メモリ等)が「可変である=固定されていない」ということは、月々の支払い金額についても一定ではない、ということです。つまり予想外のアクセス増加で膨大な転送量が発生した場合、その月の請求が想定外の高額になるリスクがあります。いわゆる「従量課金」と呼ばれる仕組みです。
またクラウドサーバーとVPSは仕組み的にほぼ同じであると前述しましたが、同スペックで比べるならば、VPSの方が安く利用できることが比較的多いです。
VPSとクラウド型の境界は徐々に曖昧に
ただどちらも仮想化という原理の上に成り立っているものであり、最近ではVPSとクラウド型の境界線は非常に曖昧になってきています。実際、クラウドサーバーでありながら月額固定でVPSのように使える「ConoHa(このは)」など、どちらにも分類できるようなサービスが登場しています。
そのほか、ある時点のマシン状態をまるごと保存できるスナップショット機能や、仮想マシンを複数台繋ぐローカルネットワーク機能などがクラウド型の特徴と言われることもありますが、これらもVPSでも利用できるところが出てきています。
ただAPIについてはVPSでは利用できるところはまだほとんどありません。APIとは簡単に言えばある機能の呼び出しルールです。APIが提供されている場合、自分でプログラムを組んでおけば、状況に応じて自動でメモリを増やしたりといった対応が可能になります。
結局どれを選べばいいのか
共用サーバーがおすすめな場合
最終的にどれを選ぶべきかですが、第一にVPSおよびクラウドサーバー(と専用サーバーでも管理者権限を渡されるタイプのもの)は、基本的にサーバー管理に関する知識と技術を必要とするものです。
そのためもしこの記事を読んでいる方が「ホームページやブログを作ってみたい」といった一般的用途であれば、通常は共用サーバーがおすすめです。共用のなかでも個人向けとビジネス向けで多少おすすめサービスが異なりますが、それについては当サイトのランキングやレビューを参考としてください。
※一般的なホームページやブログであっても月間100万アクセスなどのレベルになってくると、VPSやクラウド型の方が良い場合も出てきます。ただ、基本的には低コストで共用サーバーではじめて、もし上手くそういった規模までサイトが成長したら乗り換えを検討する方が経済的です。
VPS・クラウド型の使い分け
一方、より専門的な用途であったり、あるいはウェブサイトでも恒常的ないしは一時的に大量のアクセスがあるような場合は、(技術や知識がある前提の上で)VPSやクラウド型が選択肢に入ってきます。
ただ記事中にも書いたように、VPSとクラウドの違いは曖昧になってきているので明確な使い分け基準というのは言いにくいです。ただ突発的なアクセス増加の可能性が少ないのであれば、VPSの方がコストパフォーマンスは優れていることが多いのでおすすめです。国産VPSとしては、さくらのVPSが定番です。
逆に各種メディア、あるいはソーシャルからの口コミなどによる一時的なアクセス増加が頻繁に起こるようなサイトの場合、負荷に応じてリソースを変更できるクラウド型が有力になってきます。クラウド型ホスティングではなんといってもAWS(Amazon Web Service)の EC2が有名ですが、EC2は料金が従量課金なのでその点は注意してください。
もう少し手頃なものになると、クラウドサーバーながらも月額固定のConoHaも人気が出てきています。
ConoHaはCPUやメモリなどの個別変更はできないものの、ロードバランサ―による負荷分散およびAPI利用ができるので、アクセス増加などへの自動対応も可能となります。