※本記事のなかでSEO面について触れている部分もありますが、順位決定アルゴリズムの変化によって評価が変わってくる場合もありますので何卒ご了承ください。
一つのレンタルサーバーで複数サイトを運営する場合、以下の3通りの方法があります。
- サブディレクトリ
- マルチドメイン(新規ドメイン取得)
- サブドメイン
これらの方法にはそれぞれ異なるメリット・デメリットがあり、状況に応じて使い分けるべきです。この記事では、上記3つの手法自体の説明と、さらにケース別のおすすめ手法について解説します。
また、この記事の作成にあたっては下記のページの情報も参考にさせていただきました。ありがとうございます。
目次
主サイトの下層テーマで作るなら「サブディレクトリ」
サブディレクトリによる切り分けとは
どんなレンタルサーバーでも必ず使えるのが、「サブディレクトリごとに内容を切り分ける」手法です。
この手法は独自ドメインのURLに「/(スラッシュ)」で区切ったディレクトリ(フォルダ)を作り、その中に別のコンテンツを構築するという手法です。
代表的な例としては価格.comがあり、トップページ(kakaku.com)の下層に、パソコン(/pc/)や家電(/kaden/)のような別コンテンツが存在しています。
主サイトの純粋な下層テーマであるときに使う
例に挙げた価格.comの場合、メインテーマは「価格比較をする」ことです。そして下層コンテンツはいずれも、このメインテーマの純粋な下層テーマになっています。つまり「パソコンの価格比較」や「家電の価格比較」がそれぞれのテーマです。
サブディレクトリ型は、このように切り分けられたそれぞれのサイト(コンテンツ)が、メイン(トップ)の純粋な下層テーマとなる場合におすすめの形態です。
たとえば現在ダイエット全般を扱うウェブサイトを運営しているとします。そこからさらにレコーディングダイエットに特化したサイトを作る場合、サブディレクトリに新規サイトを作るのが自然と言えます。
メリットとデメリット
○:どんなレンタルサーバーでも利用できる
サブディレクトリ型のメリットとしては、まずどんなレンタルサーバーでも利用できることがあります。後述するマルチドメインやサブドメインは、それぞれサーバー側に対応した機能が用意されていることが必要です。しかしディレクトリの切り分けは、ようするに自分のサーバー領域に新規フォルダを作ればいいだけなので、特別な機能は必要ありません。
○:必要な独自ドメインは1個だけ
すべてのサイトはトップページの下層に作るだけですから、取得する独自ドメインもメインの1個(価格.comの例で言えば「kakaku.com」)だけで済みます。費用面で経済的と言えます。
○:新規サイトにも既存のドメインパワーの恩恵がある
すでにメインサイトがある程度の期間運営されており、良質なコンテンツや外部からのリンクがある場合、そのドメインはGoogleなどの検索エンジンから一定の評価を受けています。
下層サイトは上層のドメインの評価(ドメインパワー)の恩恵を受けられるため、新規にサイトを作る場合でも順位が上がりやすくなります。
○:ドメイン全体のコンテンツ量を増やしやすい
現在のGoogleは外部からのリンクだけでなく、コンテンツも評価する傾向にあります。そのため良質なコンテンツを多く作ることがSEO対策では有用です。しかしテーマが狭く絞られたものの場合、作れるコンテンツ量も限られてきます。
しかし、たとえばサブディレクトリで切り分けられた下層サイトが5つあり、それぞれに100記事ずつのコンテンツを作った場合、ドメイン全体では500記事が存在することになります。このようにテーマの異なる下層サイトを利用することで、全体のコンテンツ量を増やしやすくなります。
×:低品質な下層サイトがSEOに悪影響となるリスクがある
ドメイン全体のコンテンツ量を増やしやすい反面、そのこと自体がリスクになる場合もあります。Googleのコンテンツ評価は量(記事数)だけでなく、質(記事の中身)にも大きく関係しています。
よくある例として、ドメイン全体の記事数を増やすためにサブディレクトリで日記(ブログ)を作るといったケースがあります。しかしそのブログの各記事が(他の人にとって役立つことのない)低品質なものばかりであった場合、かえってマイナス評価を受けて、それがドメイン全体の順位を低下させる危険があります。
こうしたリスクを避けるためには、低品質コンテンツと見なされる恐れのある内容は別ドメインなどまったく影響を受けない場所で運用するべきです。
テーマの異なるサイトなら「マルチドメイン」(新規ドメイン)
既存サイトとテーマがまったく異なるサイトを作る場合には、新規に別のドメインを取得して運用する方法が向いています。この方法はとてもシンプルで、ウェブサイトごとにまったく異なる独自ドメインを割り当てて運用していきます。
なお、一つのレンタルサーバー上で複数のドメインをまとめて扱いたいという場合には、サーバー側が「マルチドメイン」と呼ばれる機能に対応している必要があります。
テーマごとに別のドメインを利用している例としては、「価格.com」と「食べログ」の関係が挙げられます。じつはどちらも「株式会社カカクコム」運営のサイトです。このほかにも不動産の情報サイトである「スマイティ」などもありますが、いずれも完全に異なるドメインにて運用されています。
サイト同士の関連性がまったくないときに使う
価格.comは「商品の価格比較」、食べログは「グルメ関連の口コミ」、スマイティは「不動産の情報」と、いずれも完全にテーマが異なっています。
たとえ運営元が一つの会社であっても、このようにサイト同士に関連性がない場合には、別個のドメインで運用することが多いです。SEO対策の面ではサイトテーマが統一されていた方がGoogleからの評価が高くなりますし、ユーザーに混乱を招く心配もありません。
メリットとデメリット
○:サイト同士が影響を受けない
Googleでは順位低下(ペナルティ)がときに発生することがあります。本来は悪質なSEO対策を行っているサイトのみが対象となるはずなのですが、故意ではなくともペナルティに引っかかってしまうケースがあります。
こうした場合、複数サイトを一つのドメインで運用(サブディレクトリ型)していると、ドメイン配下の全サイトに順位低下のリスクがあります。しかし別ドメインであれば、SEO上の評価も切り離されています。つまり、特定サイトのペナルティに他サイトが巻き込まれるという危険をなくすことができます。
○:サイト内のテーマを統一しやすい
たとえばサブディレクトリ型の場合、テーマを共通させて作っているつもりでも、いつのまにか全体がちぐはぐになってくることがあります。たとえばダイエットサイトの下層に低カロリー料理のサイトを作ったりした場合、いつのまにか料理コンテンツが増えすぎて、全体のテーマが「ダイエット」なのか「料理」なのか曖昧になったりします。
これに対して新規にドメインを取得した場合、どれだけ料理コンテンツが増えても、既存のダイエットサイトにはなんの影響も及ぼしません。むしろ「ダイエット」と「料理」のそれぞれに特化したサイトになることで、Googleからも専門性の高いサイトであると評価してもらいやすくなります。
×:ドメインは一から育てる必要がある
新規に取得したドメインは、(中古ドメイン購入という例外を除いて)ドメインの価値がゼロの状態からスタートします。そのため既存の別サイトがどれだけGoogleから高評価を得ていようとも、その評価を受け継ぐことはできません。
そのため新規サイト開設後しばらくの間は、Googleからの評価も低く、(特別なSEO対策をしないかぎりは)検索エンジン経由での訪問増加はなかなか見込めません。じっくりと時間をかけて、そのドメインとサイトを育てるという姿勢が必要になります。
×:サイトの数だけドメインが必要
この手法の場合、ウェブサイトの数だけ独自ドメインが必要になります。つまり多数のサイト運営を検討している場合、それだけドメインの取得および維持費用もかかってきます。
×:マルチドメイン機能の可否と数に注意
マルチドメイン機能に対応しているレンタルサーバーを選ぶと、異なる独自ドメインのサイトを複数運営することができます。最近はマルチドメイン機能に対応しているサービスが多くなっていますが、さらに「何個の独自ドメインまで扱えるか」も確認が必要です。
たとえば対応ドメイン数が「5個」となっている場合、6個以上の異なるドメインを同時に扱うことはできません。とくに企業・法人向けサーバーの場合、マルチドメインが不可だったり、対応していても個数が少ないことがあるので注意してください。
中間的な使い方ができる「サブドメイン」
最後にサブドメインについてですが、これは独自ドメイン名の前に文字列を追加することで、疑似的な別のドメインを作る手法です。
サイト同士のテーマがまったく異なるわけでもなく、かといってそれほど高い共通性を持っているわけでもない場合に向いています。いわば、前二者の中間的な手法と言えます。
サブドメイン型の有名な例としてはYahoo!JAPANがあります。Yahoo!はウェブ検索機能を中心に据えたポータルサイト(総合サイト)ですが、天気・買い物・地図など様々な関連サービスも同時に運営しています。これら関連サービスは、いずれも「***.yahoo.co.jp」という形式のサブドメインで運用されています。
ゆるやかな繋がりを示すときに使う
Yahoo!が提供しているサービスは天気・買い物・地図など、いずれも共通したテーマがあるわけではありません。その点では通底したテーマがある場合に使うサブディレクトリ型には不向きと言えます。
よって通常であればサービス別に異なるドメインを使うところです。しかし、Yahoo!ぐらいに巨大な企業やサービスになると、Yahoo!が提供しているということ自体がひとつの信頼性を持ちます。そのため、いずれのサービスもYahoo!運営なのだという繋がりを示したいという面もあります。
こうした、ゆるやかな繋がり(間接的な繋がり)を示したいときに有用なのがサブドメイン型です。Google(google.com)なども、Gmailは「mail.google.com」のように、やはりサブドメイン型を用いて関連サイトを運用しています。
メリットとデメリット
○:取得する独自ドメインは1個だけ
サブディレクトリ型と同様のメリットですが、取得する独自ドメインが1個だけで済むため、低コストで多数のサイトを運営できます。
○:ドメイン価値をある程度引き継げる
新規に取得したドメインは一から育て上げなければいけませんが、サブドメインの場合は主ドメインの価値をある程度引き継げると言われています。
ただどの程度引き継げるかについては意見が分かれるところもあり、はっきりしたことは分かりません。ドメインの完全な下層にサイトを作るサブディレクトリ型と比べると、純粋な引継ぎにはならないのかもしれません。
とはいえ、国産の無料ブログなどでもサブディレクトリ型(アメブロ・Yahoo!ブログ等)、サブドメイン型(はてなブログ・FC2等)の二種類がありますが、検索順位に極端な差異があるようには思えません。気にしすぎる必要はないのでは、と個人的には考えています。
×:サブドメイン機能の可否と数に注意
独自ドメインからサブドメインを作るには、レンタルサーバー側がその機能に対応している必要があります。
現在はほとんどのサービスで利用が可能ですが、法人向けのごく一部(Bizメール&ウェブエコノミーなど)ではサブドメインが使えないものがあるのでご注意ください。またマルチドメイン同様、サブドメインも幾つまで作成可能なのかもあわせてチェックが必要です。
×:使いどころが難しい
三つの手法のなかでは中間的な立ち位置にあるサブドメインですが、実際には一般ユーザーが使うとなると難しい場合が多いです。
例に挙げたYahoo!やGoogleにしても、知名度がそれだけあるからこそ、サブドメインでのサービス展開に意味が生まれます。そうでなければ、価格.comと食べログのようにいっそドメインを完全に分けた方が分かりやすくなります。
あえて使いどころを探すと「強いドメインを所有しており、その力を上手く生かしつつ既存サイトと多少の共通項を持つサイトを作りたい」場合には向いているかもしれません。
まとめ
それぞれの手法を見てきましたが、最後にもう一度まとめておきます。
- サブディレクトリ
メインサイトの純粋な下層テーマであるサイト(またはコンテンツ)を作るとき - マルチドメイン(新規ドメイン取得)
まったく異なるテーマのサイトを複数作るとき - サブドメイン
既存ドメインの力を生かしつつ、テーマに多少の共通性を持つサイトを作るとき
ただ実際に運用する際には、自分が利用中の(または利用予定の)レンタルサーバーにおいて、マルチドメイン・サブドメインを幾つまで設定できるのかも考慮する必要があります。
※サブディレクトリに関しては、新たにディレクトリ(フォルダ)を作成するだけなので、基本的にどのサービスでも個数制限なく運営できるはずです。